「村全体が包み込んで、見守ってくれる家族のようでした。」
村で過ごした感想を聞かれたら、一番にこう答えるでしょう。そして、穏やかに流れる時間が忘れていた心の心地よさを思い出させてくれました。私の村での一日は、目が覚めてぼんやりしていると打ち寄せる波音が聞こえ、遠くでは鶏が鳴き始める。そんな音と共に始まりました。
私がこのプログラムに参加を決めたのは、先に参加を決め、準備を進めていた娘とのやり取りの中で、娘が過ごすのはどんな所だろうと興味が沸き、親子で参加させていただきました。滞在する村には自然があふれ、その中に人々の生活がありました。見るたびに色を変える海、丘から続く山の隆線、気持ちのいい潮風、人々の営み、村で過ごした時間はどの瞬間も忘れる事はできません。その中でも私の心に強く残っているのは、村の人々との出会いです。そして、人の温かさです。大通りや浜辺、家の中からでも、私たちを見かけるとどこからでも「やあ!元気?」と声が聞こえてきます。村に到着し、私達を待ちわびてくれていたのは、たくさんの子供たちです。滞在中も何度も訪ねてくれ、海を眺めながらおやつを分け合ったり、自分たちの遊び場に案内してくれたり。そしてお別れの前夜、最初はみんなはにかみながら、でも最後にはまっすぐな心で歌ってくれた歌のプレゼントは宝物になりました。
今回娘とは別々の滞在先でお世話になりました。娘はホストファミリーや近所の方々に囲まれ、ハイキングや海辺の散策、料理を一緒に作ったりとたくさんの経験をさせていただきました。また、現地の学校見学もさせていただき、とても興味がわいたようです。私は村での生活の様子が気になり、日々の食事の用意や村のお店や食堂の運営、子育ての様子などいろいろなお話を聞かせていただきました。娘の滞在先にお邪魔をして、娘の普段とは違う新たな一面やいつの間にか成長している姿も見ることができました。
私はたどたどしい英語しかできませんが、話に一生懸命耳を傾けてくれ、お互い何度も言葉を言い換え、言葉でのコミュニケーションには時間がかかる事もありましたが、表情やジェスチャーなど交え、伝えたい、わかりたいという思いがあると伝わるという言葉以上のものを感じました。
そしてもう一つ。私は「私」という感覚を久しぶりに取り戻した気がします。娘との同行でしたが、日本から離れ、一参加者としていろいろな経験をさせていただき、自分がとても開放された日々でした。そのように感じる自分の気持ちがとても新鮮で心地よい時間でした。
村での滞在を終え、こんなにも安心して楽しく過ごせたのは村の人たちの温かさはもちろんですが、このヤンバプログラムとの長年の深い信頼関係があるからこそだとヤンバスタッフさんと村の人たちとの交流の様子を見て思いました。この旅では、娘は娘の、私は私の、素敵な出会いと経験にあふれたとても貴重な時間を過ごすことができ、私達親子の大切な思い出となりました。